2025.09.8
企業が従業員のモチベーション向上や生活充実のために支出する費用は、税務上「福利厚生費」として扱われる場合があります。立川エリアの企業でも、働きやすい職場環境づくりの一環としてさまざまな福利厚生制度を導入していることでしょう。これらを正しく福利厚生費として計上するには一定の要件を満たす必要があり、要件を満たさない支出は従業員への給与扱いとなって課税対象になる可能性があるため注意が必要です。
福利厚生費は大きく分けて「法定福利費」と「法定外福利費」の2種類があります。法定福利費とは、社会保険料の事業主負担分など法律で企業負担が義務付けられている費用のことで、会社として必ず支出しなければならない福利厚生です。一方の法定外福利費は、企業が自主的に設けている従業員やその家族のための福利厚生制度にかかる費用を指します。一般的に「福利厚生費」といえば、この法定外福利費を指すケースが多く、具体例として次のようなものが含まれます。
このように多岐にわたる費用が福利厚生費(特に法定外福利費)に該当します。立川市内の企業でも、社員旅行の実施や定期健康診断の受診推進など、従業員のための様々な制度を積極的に導入している例が多く見られます。これらの費用は適切に処理すれば福利厚生費として経費計上できますが、税務上福利厚生費と認められるためには次のような条件を満たす必要があります。
※なお、福利厚生に関する社内規程をあらかじめ整備し、従業員に周知しておくことも望ましいでしょう。社内ルールを明確にしておけば、税務調査の際にも福利厚生費として説明しやすくなります。
では、具体的なケースごとに福利厚生費として認められるか、給与と見なされるかを確認してみましょう。立川エリアの企業でも起こりうる代表的なケースを5つ取り上げ、その扱いを解説します。
会社所有の社宅や、会社が借り上げたアパート等を従業員に住居(社宅・寮)として提供するケースがあります。この場合、従業員に家賃相当額の半分以上を負担させていれば、残りの会社負担分は福利厚生費として処理可能です。一方、従業員の負担が家賃の半額未満であったり無償で社宅を提供している場合には、会社が負担した分は当該従業員への給与扱いとなり課税対象となります。
※例えば住宅手当のように現金で家賃補助を行う場合は、その支給額全額が給与と見なされる点に注意が必要です。
従業員の慰労やレクリエーションを目的として社員旅行を行う場合、次の2つの要件をいずれも満たしていれば、原則として旅行費用は福利厚生費として認められます。
上記要件を満たす社員旅行であれば、その旅費や宿泊費は会社の福利厚生費として処理できます。ただし、旅行中に一部の社員だけが会社負担でゴルフコンペに参加した場合など、その特定社員のみが享受する娯楽部分の費用は給与扱いとなる点に注意しましょう。また、取引先の接待や慰安を目的とする旅行は従業員の福利厚生ではなく交際費に該当します。社員旅行と称していても目的や参加対象によって扱いが変わるため、経費計上の科目選択には注意が必要です。
会社の創立記念に社員へ記念品を贈呈したり、永年勤続した従業員を表彰して記念品の贈呈や旅行・観劇に招待したりするケースもあります。これらの記念行事にかかる費用については、次の条件をすべて満たせば福利厚生費として認められます。
【創業記念品の場合】 社員に配る創業◯周年記念の品などが該当します。条件は以下の通りです。
【永年勤続者への報奨の場合】 勤続○年表彰として記念品贈呈や旅行招待を行う場合が該当します。条件は以下の通りです。
上記の条件を満たしていれば、創業記念品の購入費用や永年勤続表彰のための旅行招待費用などは福利厚生費として処理できます。ただし、記念品の支給や旅行・観劇への招待の代わりに、現金や商品券などを支給した場合は注意が必要です。その場合は支給額の全額(商品券なら券面額)が給与扱いとなり、従業員の所得税課税対象となってしまいます。
全従業員を対象に定期健康診断を実施し、その検診費用を会社が負担する場合も福利厚生費として認められます。会社が病院や検診機関へ費用を直接支払ったり、一旦従業員が立替えた検診費用を後日会社が精算したりする形でも問題ありません。立川市内の企業でも、従業員の健康管理のために年1回の定期健診を実施しているところが多く、この費用は適切に処理すれば福利厚生費となります。
ただし、一般的な定期健診の範囲を超える高額な検査まで会社が負担した場合には注意が必要です。例えば、人間ドックのオプション検査など通常より費用がかさむ検診を全額会社負担にした場合、その高額な部分は給与として課税対象と判断される可能性があります。福利厚生目的とはいえども、社会通念から大きく逸脱した手厚すぎる健康サービスは給与扱いとなり得る点を押さえておきましょう。
社員食堂でのまかないや仕出し弁当の提供など、会社が従業員の食事代を一部負担するケースもあります。立川周辺の企業では、昼食補助として仕出し弁当を安価に提供したり、夜間勤務者に夜食を支給したりといった福利厚生を行っている例も見受けられます。このような食事の支給に関する費用は、次の2つの条件を満たす場合に福利厚生費として扱われます。
上記の要件をクリアしていれば、食事に限定して利用できるチケットやクーポンを配布するケースでも福利厚生費として非課税処理できます。しかし、食事手当を現金で支給した場合は話が別です。その場合は現金支給額の全てが給与と見なされ、従業員の所得税の課税対象となりますので注意してください。