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2026年1月1日施行の「取適法」:中小企業に求められる注意点と対応

2025.10.20

ここ数年、原材料費やエネルギーコスト、労務費などの経営コストが急激に増加しています。製品やサービスの価格にコスト増分を転嫁したいと考えていても、取引先との関係を気にしてなかなか値上げに踏み切れない――そんな葛藤を抱える中小企業の経営者は、立川周辺の企業でも少なくないのではないでしょうか。取引上の力関係から得意先に提示された条件をそのまま受け入れてしまうケースも多く、一方で賃上げの機運が高まり賃上げ原資を確保しなければならないという、いわば「板挟み」の状況に陥っているのが実情です。

こうした状況を受けて、中小企業を含むすべての事業者が適切に価格転嫁できる取引環境を整備・定着させることを目的に、「下請代金支払遅延等防止法」(いわゆる下請法)が改正されました。改正後の正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」で、略称が「中小受託取引適正化法(取適法)」となります。この改正法は2025年5月16日に成立し、2026年1月1日から施行される予定です。

また今回の改正では、価格交渉や代金の支払方法に関する禁止行為の新設、適用対象となる取引内容の追加や対象企業規模の拡大など、幅広い見直しが行われています。主な改正内容は以下の通りです。

  1. 価格協議を無視した一方的な代金決定の禁止 – 受託事業者(委託を受ける側)から価格交渉の申し入れがあったにもかかわらず協議に応じない、または価格算定に必要な情報提供を行わない等、公正な協議を経ずに一方的に代金額を決定する行為が禁止されます。
  2. 手形払い等、現金化が困難な支払手段の禁止 – 約束手形による代金の支払い、ならびに支払期日までに代金相当額を受け取ることが困難な支払方法の利用が禁止されます。
  3. 「特定運送委託」の新たな規制対象追加 – メーカーや卸売業者等の発荷主が運送事業者に対して行う「物品の運送の委託」(特定運送委託)が、新たに取適法の規制対象取引に加えられます。
  4. 適用対象となる従業員規模基準の追加 – 委託側企業は従業員数が300人超(役務提供※の委託の場合は100人超)、受託側企業は300人以下(役務提供の場合は100人以下)の事業者が新たに適用対象となります。※役務提供委託とはサービス業務の委託などを指します。
  5. 法律上の用語の変更 – 条文中の用語も見直され、「親事業者」は「委託事業者」、「下請事業者」は「中小受託事業者」というように名称が変更されています。

中小企業も委託側になり得るため、早めの備えを

今回の従業員基準の追加により、今後は中小企業であっても発注側の「委託事業者」となる可能性が十分にあることに注意が必要です。立川市および周辺地域で事業を営む中小企業の皆様も、この点を他人事とせず備えておきましょう。また、取適法に違反する行為があった場合には50万円以下の罰金等の罰則規定が設けられていることも押さえておく必要があります。

施行日までまだ時間はありますが、今のうちから以下の準備・対応を進めておくことが重要です。

  • 自社の取引内容や取引先が取適法の適用対象に該当するかどうかの確認
  • 契約書・発注書など必要な書類の整備と保存
  • 法改正の内容について社内での周知徹底と従業員教育

これらの対策を早めに講じることで、立川地域の中小企業も2026年からの新法施行にスムーズに対応できるでしょう。今からしっかりと準備を進め、適正な取引環境づくりに努めていきましょう。

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