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税務調査は怖くない—3つの備えと当日の動き方

2025.08.11

「税務調査」と聞くと、映画やドラマのシーンを思い浮かべて、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
「突然税務署が来て、会社の隅々まで調べられるのでは?」──そんなイメージから、つい身構えてしまうのも無理はありません。

しかし実際には、会社に対する税務調査の多くは法人税や消費税の申告内容を確認するためのものです。いきなり抜き打ちで長期間にわたる徹底調査が行われるケースは、きわめてまれ。きちんと「適正申告」を行っていれば、過度に心配する必要はありません。

不安を小さくするには「備え」がカギ

それでも「調査に入られたらどうしよう…」という不安が残るのも事実です。では、リスクや不安をさらに減らすにはどうすればいいのでしょうか?

答えはシンプル。日頃から3つの備えを実践することです。
これらを習慣にしておくことで、税務調査に対しても堂々と臨むことができ、万一のときにも慌てず対応できます。

(1) 日々の「正確な記帳」と証拠書類の整理は、安心の第一歩

税務調査に強い会社の共通点は、日々の記帳を正しく、ため込まずに行っていることです。
「適正申告」の前提となる決算書は、日々の記帳の積み重ねによってしか作れません。逆に、記帳が遅れたり曖昧だったりすると、後から数字を合わせるために不自然な処理が増え、調査時に疑問を持たれる原因になります。

実際に「不備」が問われている現実
たとえば立川税務署管内の令和3年事務年度(R3.7~R4.6)では、132件の実地調査のうち109件で更生・決定処分が行われ、さらに29件(22.0%)で不正が認定されています。申告漏れで判明した所得は14億2,246万円超、追徴税額は約1.2億円にのぼりました。
これは決して「他人事」ではありません。毎年調査ゼロの企業でも、隔年で調査対象になる可能性があることを示しています。

根拠となる証拠書類を必ず残す
記帳を裏づけるのが証憑書類です。昔から「証拠なくして記帳なし」といわれる通り、売上や費用に関する領収書・請求書・入出金データは時系列で整理・保存しておきましょう。さらに、契約書・見積書・作業記録といった「取引の原始記録」も重要です。帳簿や決算書類と一緒に保存しておくことで、調査官から「なぜこの数字になったのか」と聞かれても、堂々と示すことができます。

(2) 毎月の月次決算と、会計事務所による「巡回監査」を受ける

税務調査では、調査官が「顧問税理士とどの程度コンタクトを取っているか」を確認することがあります。これは決算書の信頼性=税理士の関与度合いと見られているからです。

実際に立川税務署管内(令和3年事務年度)では、132件の実地調査のうち109件で更生・決定処分が行われました。つまり、形式的に決算を終えているだけでは十分とは言えず、日常的なチェックがなされていないと修正を迫られる可能性が高いのです。

毎月の月次決算と税理士による巡回監査を受けていれば、

  • 「毎月客観的な視点で会計がチェックされている」
  • 「経営の透明性が担保されている」

ことの証明になり、調査官からの質問にも自信を持って答えられます。
結果として、調査リスクを大きく減らせるのです。

(3) 税理士法に基づく「確認書面」を申告書に添付する

税理士による確認書面とは、顧問税理士が決算書・申告書の作成過程でどのような判断を行ったかを記したものです。これが添付されていると、税務署は「税理士がどの程度関与しているのか」を明確に把握できます。

そして大きなメリットが、「意見聴取制度」です。調査前に税理士が税務署職員に意見を述べる機会が与えられ、その結果として税務調査そのものが省略される場合もあります。

立川税務署管内の実績を見ても、22.0%のケースで不正が認定されている現実があります。決して少なくない割合です。こうしたリスクに備える意味でも、確認書面を添付することは「突然の調査リスクを減らす安心の制度」といえるでしょう。

税務調査はどう進むのか?流れと注意点を知っておこう

〇税務調査の基本的な流れ
実際の税務調査は、映画のように突然すべてをひっくり返すものではありません。一般的には、

1.調査官が会社を訪問し、代表者等に事業内容をヒアリング
2.帳簿や申告書、証憑類と申告内容の整合性を確認
3.必要に応じて棚卸資産や工場の稼働状況など現場をチェック
4.調査終了後、誤りや不備があれば結果を説明
という流れで進みます。

〇よくある指摘事項
では、実際にどんな点が調査で問題になりやすいのでしょうか。代表的なのは次のようなケースです。

・売上や雑収入の計上漏れ
・役員や従業員の個人的支出を経費計上している
・外注費などの支出に合理的な根拠がない
・関係会社や親族との取引に不透明さがある
・帳簿の記載ミスや証憑の不備
・電子帳簿保存や電子取引データの対応漏れ

これらに不備があると、修正申告や追徴課税の対象になるリスクがあります。実際に立川税務署管内のデータでも、132件中109件が更生・決定処分、さらに追徴総額は1.2億円超という結果が出ています。

〇無予告調査への対応
まれに事前通知なしの調査(無予告調査)が行われることもあります。その場合は、すぐに顧問税理士に連絡して相談するのが鉄則です。慌てて自己判断で対応するのは避けましょう。

POINT!

  • 調査官への回答は「あやふや」はNG。根拠なく答えると、取引先への反面調査に発展することもあります。
  • すぐに答えられない質問は「確認のうえ後日回答します」でOK。冷静に、正確に対応することが最も重要です。
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