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その資産、いざというとき現金になる?~「投資その他の資産」の中身を確認しよう~

2025.10.13

貸借対照表(B/S)の「資産の部」に計上される固定資産のうち、長期保有を目的としたものは「投資その他の資産」に区分されます。これらはすぐに現金化しにくい資産であり、資金繰りや事業承継に影響を及ぼすケースもあります。立川地域の企業でも例外ではなく, 自社の「投資その他の資産」の中身は年に1~2回はチェックしておくことをお勧めします。

すぐ現金化できない資産が多くてB/Sが凝り固まっていませんか?

貸借対照表の固定資産には、目に見える「有形固定資産」(建物、機械、土地など)や、目に見えない「無形固定資産」(ソフトウェア、借地権、特許権など)に加えて、「投資その他の資産」という区分があります。この「投資その他の資産」には、長期保有を目的とした資産がまとめられ、具体的には次のようなものが該当します。

  • 投資有価証券(長期の資産運用目的で保有する株式・国債・社債・投資信託等)
  • 子会社・関係会社株式
  • 出資金
  • 敷金・保証金
  • 長期貸付金
  • 長期前払費用
  • 保険積立金
  • 投資不動産
  • リゾート会員権・ゴルフ会員権
  • 破産債権・更生債権

これらの資産は会社の本業とは直接関係なく将来のために保有している資産であり、たとえ「資産」とはいえどもすぐに現金化するのが難しい(=流動性が低い)という特徴があります。

資金繰りの健全性を考えると、理想的なのは「現金」「預金」「売掛金」などすぐ現金化して使える(=流動性が高い)資産が多い状態です。しかし、「投資その他の資産」に分類される資産が多いと、いざというときに売却などで現金を確保できず、資金繰りが苦しくなってしまいます。いわゆるB/Sが“固定化”してしまった状態と言えるでしょう。

含み益が含み損に変わることも!?資金繰り悪化のリスクも

「投資その他の資産」に計上される項目は原則として取得時の価額で計上します(名義変更料や登録料も含めて資産計上します)。そのため、株式や不動産などを長期間保有している間に市場価値が下落すると、帳簿上は多額の「含み損」(簿価に対する未実現損失)を抱えてしまっていることがあります。特に、バブル期に取得した投資用不動産やゴルフ会員権などがある場合は注意が必要です。経営上さほど影響のない資産であれば、損失計上を見据えて思い切って売却することも検討しましょう。ちなみに立川エリアの企業でも、バブル期に取得した資産を抱えて塩漬け状態になっているケースが見受けられますので、早めの対策をお勧めします。

一方、保有中に価値が上昇した資産については「含み益」(簿価を上回る未実現利益)が生じます。含み益のある資産を持っていることは経営上の安心材料の一つとなり、その評価額をもとに金融機関から融資を受けられるメリットもあります。ただし、これらの含み益もあくまで未実現の利益であり、売却しない限り現金にはなりません。市場価格の変動が激しい株式などでは、含み益が一瞬にして含み損に転じる可能性もあります。実際、現金化のタイミングを逃してしまい、結果として資金繰りが行き詰まってしまうケースも起こり得ます。

また、事業承継(相続)の際には、会社の自社株評価においてこれらの資産は取得価額から時価に評価替えされます。資産の時価評価額が高いほど自社株式の評価額も高額となり、その結果、後継者(相続人)の相続税負担が大きくなる可能性があります。自社株評価は定期的に見直し、評価額が高いうちに計画的な贈与や譲渡を行うことや、必要に応じて「特例事業承継税制」の適用を検討することも大切です。

6つの視点で「投資その他の資産」を見直しましょう

「投資その他の資産」に該当するものは日常的に売買されるものではないため、どうしても社内で見落とされがちな項目です。自社B/S上の「投資その他の資産」の状況を、以下の6つの視点から一度点検してみましょう。

  • 経理処理は適切か? 資産として計上した金額が税法の規定に沿って正しく処理されているか確認しましょう。
  • 本当に必要な資産か? 価値が大幅に下落した資産や明らかに過大な投資はないか見極め、必要性が低いものは整理・売却も検討しましょう。
  • すぐに現金化できるか? 緊急時に売却などで迅速に現金化できる資産かどうかも重要なチェックポイントです。
  • 含み損が出ていないか? 時価が取得価額を下回る資産を抱えていないか見極めましょう。損失が出ている資産は放置せず、思い切って処分することも考えましょう。
  • 含み益を過信していないか? 含み益は市場の変動で消えてしまうリスクもあります。未実現の利益に頼りすぎないよう注意しましょう。
  • 回収可能性はあるか? 長期貸付金や債権については、確実に回収できる見込みがあるかどうか予め確認しておきましょう。

こうした定期的な点検を行うことで、いざというときに慌てずに済む健全な財務体質を維持できます。

参考:保険積立金・長期前払費用の処理に注意

企業が保険契約を締結する際には、その契約内容や保険料の支払方法に応じて経理処理の方法が異なります。損金(経費)に算入できる部分は「保険料」または「福利厚生費」として処理しますが、損金算入できない貯蓄性の部分は「保険積立金」または「長期前払費用」として資産計上することになります。契約内容によって税務上の取扱いが変わるため、処理に注意が必要です。

  1. 保険積立金 … 養老保険・終身保険など貯蓄性のある保険では、契約時に支払った保険料のうち貯蓄部分を「保険積立金」として資産計上し、特約など損金算入できる部分は「保険料」や「福利厚生費」として経費処理します。
  2. 長期前払費用 … 長期契約の損害保険(火災保険等)で保険料を一括払いした場合、契約時に支払った保険料は「長期前払費用」として資産計上し、その後、契約期間にわたって按分して「保険料」(経費)として処理します。また、保障期間が長期に及ぶ定期保険の生命保険料については、契約期間や加入者の年齢等により損金算入できるかどうかが変わります。損金にできない場合は、その保険料を「長期前払費用」として処理します。
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